2021年は、レーザー製品の安全規格にとってにぎやかな年でした。2つの新しい欧州規格(EN)が発行され、既存の規格の要求事項に加えて新しいレーザー製品の要求事項が追加されました。 新規格への対応のための重要な日付が近づいており、製造者はこれらの新しい要求事項について理解しておく必要があります。 この記事では、新しい要求事項と実施時期に関するガイダンスと解説を提供します。
レーザー製品

EN 60825-1:2014/A11:2021 – レーザー製品の安全性 – パート1:機器の分類と要求事項

欧州におけるレーザー製品の安全規格EN 60825-1は、ベースになるレーザー製品の安全規格IEC 60825-1と歴史的に違いはありませんでした。つまり、IEC 60825-1に適合すれば、EN 60825-1のあらゆる要求事項をカバーすることができました。 しかし、2021年2月に発行されたEN 60825-1のAmendment 11(A11)により、IEC 60825-1には含まれない要求事項が追加されました(注:Amendment 11は、EN版規格にのみ適用され、IEC版には適用されない改正番号です)。 そのため、レーザー製品の製造者は、IEC 60825-1と最新のEN 60825-1の両規格への適合のために、ENの追加要求事項を満たしていることを確認する必要があります。 EN 60825-1:2014/A11:2021に対して考慮する必要がある追加要求事項の一部は以下の通りです。

  • 消費者用レーザー製品に対して新しいEN 50689規格に適合すること(後述のEN 50689についての要求事項を参照ください)
  • 波長1250-1400nmに対する試験と分類の新しい考慮事項
  • 保護筐体によるクラス1の被ばく放出限界(Accessible Emission Limit: AEL)を超える放射への人の被ばく防止についてより具体的に強調
  • IEC 60825-1:2014の解釈シート(Interpretation Sheets)を付属書に収録

2021年12月、改正版EN 60825-1:2014/A11:2021が低電圧指令(Low Voltage Directive: LVD)の整合規格として欧州官報(Official Journal: OJ)に掲載されました。 OJで発表されたEN 60825-1:2014(A11無し)の整合規格からの取り下げ日は2023年6月21日です。 したがって、レーザー製品の製造者は、LVDの必須要求事項への適合推定の付与のために2023年6月21日までに新しいEN 60825-1:2014/A11:2021の要求事項の考慮が推奨されます。

EN 50689:2021 – レーザー製品の安全性 – 消費者用レーザー製品に対する特定要求事項

2つ目のレーザー製品の安全性に関するEN規格は2021年11月に発行されました。EN 50689は、消費者用レーザー製品として定義された製品に対する追加要求事項を規定する全く新しい規格です。 EN 50689の定義に基づくと、消費者用レーザー製品とは、「消費者用を意図したレーザー製品」または「消費者用でない場合でも合理的に予見可能な条件下で消費者が使用する可能性があるレーザー製品」と定義されています。 したがって、この定義に該当するレーザー製品の製造者は、IEC/EN 60825-1に加え、EN 50689も考慮する必要があります。

EN 50689の適用範囲に入る可能性のある消費者用レーザー製品の例としては、レーザープリンター、バーコードリーダー、レーザープロジェクター、スマートフォン、レーザーポインター、レーザー水準器、ロボット掃除機、Lidarなどが挙げられます。

注:EN 50689に対応するIEC規格は無いため、これらの要求事項はENへの準拠にのみ適用されます。

消費者用レーザー製品に対するEN 50689に含まれる追加要求事項の一部は以下の通りです。

  • 新しいEN 60825-1:2014/A11:2021に適合すること(規格の詳細は前述を参照ください)
  • 消費者用レーザー製品の定義と分類上の制限事項
  • 子供向けの消費者用レーザー製品の定義と分類上の制限事項
  • 消費者用レーザー製品に対する試験と分類の追加考慮事項
  • レーザーポインターに関する制限事項
  • クラス3Rの消費者用レーザー製品に対する追加要求事項。レーザー動作前の慎重な手順を要する機能、点灯状態の表示機能、波長とピークパワーに関する制限、分類のための簡略化した(規定)評価法(C6=1)の使用などを含む。
  • ラベルとユーザー情報の内容に関する要求事項

2022年5月、EN 50689:2021がLVDの整合規格としてOJに掲載され、LVDの必須要求事項への適合推定の付与のために使用可能になりました。 EN 50689は新規格であるため、旧版から新版への移行期間はありません。 LVDに適合するために、製造者はこの整合規格またはその一部を適用するかどうかを選択することができます。ただし、整合規格EN 50689を適用しない場合、他の手段(例えば、他の全ての利用可能な規格を含む既存の技術仕様)を使用して、製品が必須要求事項に適合していることを証明する必要があります。 整合規格は強制ではありませんが、指令や規則で定められた必須要求事項を満たすためのプロセスを簡素化することができます。 このため、EUの整合規格が存在する場合はその規格を使用するのが一般的です。

さらに、EN 50689は、EU法の規則において製品の安全性について特定の規定がない場合に、消費者用製品に適用される一般製品安全指令(General Product Safety Directive: GPSD)に規定されている一般安全要求事項への適合確認のために使用することもできます。

そのため、適用要求事項への適合に関して潜在的な疑義が生じることへの防止策として、EN 50689への適合の検討が推奨されます。また、EN 60825-1:2014/A11:2021 が EN 50689 の使用を要求していることと、A11 付きの新しいEN 60825-1が 2023 年 6 月 21 日付けで要求されることを念頭に置くことが推奨されます。以上により、製造者は同日までにEN 50689に適合する必要があると推察できます。

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