EUの包装材規則PPWRの概要 – 2025年1月公布、2026年8月適用
EUの包装材規則PPWRの正式公布
2025年1月22日付公布のEU官報に、新・包装材規則 (Packaging and Packaging Waste Regulation、通称PPWR) がRegulation (EU) 2025/40として掲載されました。2025年2月11日に発効し、2026年8月12日に適用されます。
規制の対象
現行法である「包装材指令 (94/62/EC、通称PPWD)」で規定されるのと同じく、EU域内に持ち込まれるあらゆる包装材 (Packaging) が規制の対象です。
使用される材料を問わず、また使用・発生する分野も問わずに、商品の封入・保護・取り扱い・輸送および提示を目的に意図される物品をすべて対象とすることから、大変幅広いものを対象にしています。
要求事項
包装材の設計に直接関係する、製造者の責任で適合させる必要のある要求事項は、以下の通りです。
多くの要求事項は、包装材指令には設定されていない要求事項であるため、適合のためには包装材の設計から見直しが求められると考えられます。
- Article 5: Requirements for substances in packaging (有害物質の制限)
重金属およびPFASの含有上限が課されます。 - Article 6: Recyclable packaging (リサイクル可能性)
すべての包装は「リサイクル可能である」とみなされるべく、追って定められる一定条件を満たす必要があります。基準に沿って、包装材のリサイクル可能性を評価し、グレードA・B・C (およびそれ未満) のいずれに該当するか確認をし、一定グレードを満たさないものは上市ができません。 - Article 7: Minimum recycled content in plastic packaging (リサイクルプラスチック材の含有割合)
包装材の種類・形式ごとに、リサイクル材の含有すべき割合が定められ、それ以上含有していないプラスチック包装は上市できません。リサイクル含有率の計算・検証は、追って定められる規則に基づく必要があり、第三者監査の実施も検討されます。 - Article 9: Compostable packaging (堆肥可能な包装)
ティーバッグや野菜・果物用の粘着ラベルは、一定基準に適合した堆肥化可能な包装でないといけません。 - Article 10: Packaging minimisation (最小化)
二重壁や偽底などを禁止し、包装材は機能性を確保するために「必要最小限の重量・容積」に抑えられているよう設計されていないと上市できません。追って定められる規格に基づき、包装材の最小化について計算・測定を行い評価する必要があります。 - Article 11: Reusable packaging (再利用可能性)
すべての包装は「再利用可能」とみなされるべく、安全・衛生といった機能を維持しつつ、複数回再利用することを目的として設計されている等の基準を満たさないと上市できません。追って定められる規則に基づき、包装の「何回再利用できるか (ローテーションの最小回数)」の基準を満たすことを評価します。 - Article 12: Labelling of packaging (ラベル表示)
材料構成に関する情報を、追って定められる規則に基づき表示する「統一ラベル」を包装材につける必要があります。さらに再利用に関する情報のラベル表示も求められます。
上記要求事項への適合を確認した内容を、製造者が技術文書にまとめ、適合宣言書 (DoC) を作成することも求められます。「製造者 (Manufacturer)」の定義は、包装材そのものを製造する者に限定されず、「包装された製品を製造する者」も含まれるため注意が必要です。
また上記以外に、現地事業者と連携して実施されるべき再利用スキームの構築や、それでも廃棄される包装材に対する回収・リサイクルの義務等が規定されています。
関連して整備される下位規則まで把握しないと要件実施が難しいこと、要求事項の開始時点が細かく異なることや、各要件・各関係者が複雑に絡み合った法構造となっていて製造者・輸入者・現地の流通販売者が協力して適合させる必要があることなどから、大変ハードルが高い法規と言えます。
一方で、一般消費者への提供に使われる製品包装・店舗包装だけが対象ではなく、輸送包装や事業者間の取引で使用される包装材も含めて、EUに持ち込まれるあらゆる包装材が対象であるという点から、影響を受ける範囲は大変幅広いことに注意いただく必要があります。
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Article 5の含有物質の確認試験や、Article 7のリサイクルプラスチック材含有率を示す第三者検証など、各項で規定されている要求事項への適合のためのサポートを提供可能です。ご要望の場合は、具体的な対象項・要求事項を特定のうえ、どのようなサポートをご希望かお伝えください。
お問合せ先
環境・サプライチェーン事業部 ULShimadzu@ul.com
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2022年11月の最初の草案公表以降、修正検討が重ねられたこの法案は、すでに議会・理事会間で2024年3月に暫定合意が結ばれております。法の採択に向けてEUでは議会と理事会それぞれの採択・承認が必要となっているものの、議会は2024年4月に採択済であったため、今回の理事会採択をもってこの立法プロセスは最終局面を迎えました。
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現行の包装材指令を置き換えるこの新法は、包装材の再使用・再充填や、包装材の使用量を減らす設計、プラスチック包装中のリサイクルプラスチック含有目標等の要求事項を盛り込んだ内容で2022年に最初の草案が発表されています。
そして上記のプレスリリースでも、これらの要求事項は合意された措置に含まれていると記載されています。
つまり包装材の設計にも踏み込んだ新たな要求事項が盛り込まれ、製造者から販売・流通者までが協力して適合させることが求められる内容になることが予想されます。
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「包装材指令」から新法「包装材規則」へ
現在EUでは、Directive 94/62/EC (通称:包装材指令Packaging Directive) を施行し、包装材に対する有害化学物質の含有制限、材質表示および生産者責任に基づく回収・リサイクルといった義務を設けています。
しかし、増加し続ける包装材およびプラスチックに対しては、廃棄物発生の抑制や持続可能な使用を実現する、より強固な規制措置に落とし込む必要がある、と新循環型経済行動計画 (New circular economy action plan) には掲げられています。
そのため、現行の包装材指令を廃止して全面的に置き換える新法を設け、包装材のライフサイクル全体にわたって要求事項を定めてラベル表示要求も強化することで、より強固に包装材の循環経済を構築し、非持続可能な包装材を廃止する取り組みが始まっています。それがRegulation on Packaging and Packaging Waste、通称「包装材規則 (PPWR)」です。
2020年6月にこの新法の制定に向けた取り組み・全体ロードマップが公表され、2022年11月には規則案が公表されました。