2017年4月発表
株式会社 UL Japan

世界的安全科学機関であるUL(本社:イリノイ州ノースブルック)の環境事業部門であるUL Environmentは、3月13日付で、欧州のREACH化学物質規則の順守と動物実験の必要性の削減に役立つ化学物質評価ツール、「REACHAcross™ 」ソフトウェアの提供を開始すると発表しました。同種のソフトウェアとして初めて、「機械学習」が、化学物質のエンドポイント反応の評価に導入されており、正確なリードアクロス(類推)を備えた定量的構造活性相関モデル(QSAR)の客観的計算手法となっています。本ソフトウェアにより企業は、REACH規則の順守に必要である動物実験の削減を進めることができるでしょう。

REACH規則は、年間1~100トンの化学物質を欧州で製造または欧州に輸入する場合、その化学物質を登録するよう求めています。REACHAcross™ソフトウェアは、2018年の期限までにこの登録を終えたい企業に向けて作られました。登録に必要なデータは動物実験によって得るのが通常ですが、時間と費用がかかり、倫理的にも企業のジレンマとなっています。ULのREACHAcross™ソフトウェアにより、動物実験の必要性は減少すると共に、複数のエンドポイントのデータを数分で取得できるようになります。

REACHAcross™ソフトウェアは、何十億という化学物質の組み合わせの分析が可能であり、従来のリードアクロスの原理を機械学習手法と合体することで、皮膚感作、急性経口毒性、目や皮膚の急性炎症や変異原性などの健康上のエンドポイントに測定可能かつ汎用可能なモデルを提供します。また、事例学習機能により、50万を超える化合物のデータから毒性学と化学物質のデータを組み合わせて利用することができ、その能力は今後データが増えるにつれさらに向上する予定です。

UL Environmentのバイスプレジデントでありジェネラルマネージャーであるアルベルト・ウゲッティは、「化学物質規制の順守に関するソフトウェアの分野で画期的な新ツール、REACHAcross™ソフトウェアの提供を開始します。REACH規則の順守については試験やその他のソフトウェアツールが色々提供されていますが、機械学習を膨大な評価データに結び付け、REACH規則にそったレポートを作成できるものは今までありませんでした。このソフトウェアは、毒性学者や化学物質の製造企業及び調剤製造企業、コンサルタントを通じ、素早く市場に受け入れられると予測しています」と、述べています。

REACHAcross™ソフトウェアは、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生スクールの毒性学教授であるトーマス・ハートン博士と、同教授の下で博士課程を履修しているトーマス・ルチテフェルド、並びに、ULに所属する科学者と毒性学者が共同で開発したもので、製品の調査・開発段階で使用する化学物質の毒性を扱う第2版の作成に既に取り組んでいます。商業目的の化学物質については安全性試験が行われていないものが数多くあり、これが完成すると、企業は化学物質を使用する前にその毒性を発見し、開発段階で代替物質を選択することができるようになるでしょう。

トーマス・ハートン博士は、「REACHAcross™ソフトウェアの正確性と性能は予想以上です。REACH登録などから大量のデータを得たことにより、何十億にのぼる化学構造の組み合わせ、並びに、6つのエンドポイント全体で80%とバランスよい感度を備えた複数のエンドポイントを明らかにすることができました。本ソフトウェアは既にOECD規格で検証を受けており、私たちは、これは評価を十分に正当化するものであり、外部検証における科学的根拠になると確信しています」と述べています。

米国では、有害物質管理法(TSCA)の改正により、健康影響に基づいて類似化学物質を規制する権限が環境保護庁(EPA)に与えられ、また、韓国、台湾、中国でもREACHに似た規制が策定されつつありますが、これらの新しい規制への対応においても企業をサポートできるものにしていく予定です。詳細は、ulreachacross.com をご覧ください。

【UL Environmentの概要】
UL Environmentは、環境に好ましい製品、サービス、組織の成長と開発をサポートすることによりサステナビリティ(持続可能性)、環境、安全の推進に世界規模で取り組んでいます。そして企業が環境目標を達成し、また、各種政府/調達機関、小売業者、消費者が信頼できる製品を発見するお手伝いをしています。そのサービスには、環境性能検証、各種認証、環境製品宣言、室内空気質認証、化学物質放散試験、組織に対する環境認証、コンサルティングなどが含まれます。詳細は、ウェブサイト(https://industries.ul.com/environment )並びにTwitter、Facebook、LinkedInをご参照ください。

【ULの概要】
ULは、科学の活用によって安全、セキュリティ、サステナビリティ(持続可能性)における課題を解決し、世界中の人々のために安全な生活/職場環境を推進します。ULマークがもたらす信頼が、先進的製品及び技術の安全な導入を可能にします。ULのスタッフは世界をより安全な場所にするという情熱を共有しています。その提供サービスは、試験・検査・監査・認証・検証・アドバイザリー/トレーニング・サービスなど多岐にわたります。また、安全とサステナビリティに関するソフトウェア・ソリューションを提供することで、これらの活動を支援しています。詳細はウェブサイト(UL.com)をご参照ください。